作家の不思議(9) タイトルはどう決めるのか
麻見和史です。おかげさまでWOWOWドラマ『石の繭』の放送が終了いたしました。初めての映像化ということで少し浮かれていましたが、この先は平常運転に戻していこうと思います。ひと夏の良い思い出となりました。
ということで、知人の質問に答える「作家の不思議」ネタを再開いたします。本日はその第9回。
以下は麻見の個人的な見解ですので、これに当て嵌まらないケースも多々あると思います。どうかご了承ください。
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◆不思議その9「タイトルはどう決めるのか」
書籍を刊行するに当たり、本文を良いものにするのはもちろんですが、「商品」として見た場合に、大事なものが三つあります。一にタイトル、二にカバー、三にあらすじだと、私は考えています。せっかく刊行するチャンスをいただいたのですから、「えーと何だっけ、あの本。ま、いっか。忘れちゃったし」とならないよう、印象に残るものにしたいところです。
警察小説だとタイトルは二文字でびしっと決めるのが流行のスタイルですよね。でも使える言葉には限りがあるので、ほかの先生の本と重複しないよう、私は三文字以上を使うようにしています。
以前知人にも言われましたが、麻見本には『◆◆の◇◇』という題名が非常に多いですね。長編12作中10作に「の」が付いています。
「の」といえば宮崎駿監督作品にみられる『「の」の法則』が有名ですが、最初からそれを意識していたわけではありません(今はかなり意識してますが……)。
十一係シリーズ(殺人分析班シリーズ)の第一作を『石の繭』とし、二作目を『蟻の階段』にしたところ、講談社さんの担当氏が「じゃあ次も『の』にしましょう」と提案してくれて、以後「の」を多用するようになりました。
十一係のタイトルについて少しご説明すると、『石の繭』でカイコの「繭」を使ったので、虫シリーズにしようかと思い、次を『蟻の階段』にしました。三作目も虫で、と考えたのですが爆破の話にしてしまったせいで虫とは相性が悪く、悩んだ末、『水晶の鼓動』に決めました。
四作目は『虚空の糸』。糸ですから最初は「蜘蛛」を使えないかと思ったのですが、読みにくいということで却下となりました。五作目の『聖者の凶数』はちょっと派手すぎるかなと思いつつ、担当氏に提案してみたら一発でOKとなり、嬉しく思った記憶があります。
そして六作目、『◆◆の骨格』というところまでは出来たのですが、そこから先が難しく、何日かうんうん唸っていました。
リズムでいうと二文字か三文字だろうと思い、良い言葉がないか探していきました。こういうときのために「タイトル用のネタ帳」というのが作ってあります。それを見ながら、ああでもない、こうでもないと検討しました。
そのうち、ふとしたきっかけで『女神の骨格』というタイトルが出来ました。普段トリックなどのアイデアが降って湧くことはないのですが、これを思いついたときだけは「これだよこれ、やればできるじゃないの!」とひとりで興奮してしまいました。年に一回あるかないかのことだったと思います。
私の場合、タイトルを付けるのは本文を書き終わったあとです。全体を見直して、これならインパクトがあるだろう、という言葉を「の」でつなぎます。簡単なように見えますが、毎回タイトルを決めるのに本当に大変。
以前、ほかの先生にそんな話をしたら、「自分は最初にタイトル決めておくけど」と言われました。
「でも、書いてみないとどんな印象になるかわかりませんよね」
と尋ねたら、
「ミステリーなんだから、タイトルに『殺人』って入れてみたら?」
なるほど、たしかにそういう手もあるな、と思いました。『◆◆殺人事件』というのは今の流行りではないでしょうが、毎回共通する言葉を入れるルールにしておけば、これほど悩む必要はなかったのかもしれません。
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