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2015年6月 5日 (金)

作家の不思議(1) なぜ新キャラで書くのか

 麻見和史です。突然ですが、知人の質問に答える「作家の不思議」シリーズ。

 出版・印刷業とは縁のない知人から、「なんでそうなってるの?」と質問を受けることがたまにあります。初歩的な内容が多いのですが、案外知られていないことがあるかもしれません。ブログの題材として面白そうですので、支障のない範囲で少し書いてみたいと思います。しばらくおつきあいください。
(以下は麻見の個人的な見解ですので、これに当て嵌まらないケースもあるかと思います)

          *

◆不思議その1「A社でシリーズものを書いているのに、なぜB社、C社で新キャラを使って別の話を書くのか」

 これはアマチュア時代、私も不思議に思っていたことでした。
 A社のミステリーシリーズが好きで早く新刊が出ないかなと待っているのに、なぜか作者はB社で別の話を書いてしまう。次はA社だよねと期待していると、今度はC社でまた別の話を書いてしまう。なんでA社の話を書いてくれないの? と首をかしげることがありました。

 答えは簡単で、多くの場合、作家は出版社ごとにシリーズを変えるからです。
 例として、A社の編集者と「こういうミステリーを書きましょう」と決め、一作出してみたらけっこう売れた、という場合を考えてみます。

 作品はもちろん作家個人が書いたものです。しかし編集者と打ち合わせを重ね、助言を得て手直ししたわけですから、その作品に関してはA社と一緒に作ったものだという意識が強くなります。
 すると、キャラクターだけとはいえ、そのままB社に持っていくわけにはいかない、という話になってきます。また、B社のほうも新しいものを希望することがほとんどなので、会社が変わると一から作り直すことになるのです。
 そして一般的に、複数社から声がかかった作家は、各社に対して順番に作品を書いていこうとします。それで、期待されているのにA社の本の続刊がなかなか出ない、という現象が起こるわけです。

 さらに、ここでまた話が複雑になるのですが、A社で売れた実績があると、大きくジャンルを変えるのは危険だと判断され、ジャンルはそのままで舞台とキャラを変えましょう、と他社で提案されることが多くなります。その結果、A社、B社、C社で、基本路線は似ているけれど少しずつキャラを変えて本を出すことになるのです。

 こう書いてくると、「新しいキャラさえ考えればいいのか」と言われそうですが、もちろんそうではなく、ミステリーとしての骨格は別途作っておかなくてはなりません。手持ちのトリックやストーリーを、どういう人物に捜査・解決させたら面白いかをしっかり考えていく必要があります。
 また「売れているシリーズだけどんどん書けばいいのでは?」という意見もあるかと思いますが、そのシリーズもいつ売れなくなるかわからないので、常に一手二手、先のことを考えておかなくてはいけないのです。

 刊行した本の中で一定の売上が達成できたものについては、シリーズ化のチャンスが巡ってきます。せっかく作ったキャラだから、これを使って続編をやりましょう、ということです。一方、刊行したもののあまり売れなかった本については、そのまま終わりとなってしまいます。

 読者の方々から続きを読みたいという声をいただいても、セールス面で成果が上がらなければ続刊は出せない、ということになります。出版もビジネスですので、そのへんは非常にシビアなのです。

          *

 あれ……。エッセイふうに書こうと思ったのに、なんだかハウツー本みたいになってしまいましたね。偉そうに見えてしまったらすみません。

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