麻見和史です。今まで黙っていたのですが、じつはアニメの『SHIROBAKO』を1話からずっと見ていました。最終回を目前にした23話はすばらしい出来で、あのラストシーンには涙が……(最近、涙腺が緩い)。以下、感想をメモします。
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『SHIROBAKO』はお仕事アニメとして企画されたそうで、アニメ業界の制作進行をアニメで描くという趣向が面白いな、と思っていた。
知っている方には今さらでしょうが念のため説明すると、メインヒロイン(宮森あおい)はアニメ会社の制作担当である。ほかに原画担当(安原絵麻)、新人声優(坂木しずか)、3Dクリエーター(藤堂美沙)、脚本家志望の大学生(今井みどり)という友人がいて、将来五人でアニメを作りたいという夢を持っている。だが現実は厳しく、アニメ制作の現場はてんやわんやで、とても先のことなど考えられない状態。それでも一歩ずつ前へ進んでいくというストーリーである。
この作品、仕事の現場を描くことにはこだわりがあって、背景のひとつひとつまでが非常にリアルである(現場を見たことはないが、たぶんこうなのだと思う)。
毎週これでもかというぐらいにトラブルが発生し、しかしそれがみなの協力で解決されるところに爽快感がある。ドラマとしての誇張はあると思うが、仕事の進め方、社会人のあり方を丁寧に描いているところに好感が持てた。
私はシステム開発系の仕事が長かったので、大きなプロジェクトが始まることへの不安、トラブルが発生したときの衝撃、急な対応を迫られたときの絶望感などはよくわかる。また、わりと周囲に気をつかう性格なので、人間関係でも苦労が多かった。そういうわけで、毎回感情移入をしながら『SHIROBAKO』を見ていたのである。
仕事と組織をきちんと描いたという点だけでも注目に値する作品だが、主役五人の成長物語としても楽しめた。
成長するために挫折は必要というわけで、五人はみんな悩みを抱えている。その中で、もっとも不遇だったのは新人声優の「ずかちゃん」こと坂木しずかであった。
宮森、安原、藤堂はすでに会社員だし、後輩でまだ大学生の今井も新作アニメのスタッフに抜擢されている。それに比べて坂木はなかなかオーディションに合格できず、居酒屋のアルバイトでわずかな収入を得ている身だ。暗い部屋でひとりビールを飲みながら、テレビに出た年下の声優に嫉妬する、という場面もあった。そのずかちゃんがシリーズ終盤の23話で……。
ネタバレになるといけないので詳しくは書かないが、ラスト、坂木の表情を見た宮森の反応がすばらしかった。
以前、宮森が坂木を業界人に紹介してあげようとしたことがあった。しかしあのとき「自分にはまだ実績がないから」と思ったのだろう、坂木は遠慮した。仲間五人の中で彼女が一番苦労しているのを知っていたから、宮森は23話の最後でああいう反応を示したのである。
あのシーンは脚本もよかったし、画もよかった。作中、アフレコ台本をあんな形で使った演出も見事。恥ずかしい話ですが、私、あのシーンで泣きました。動物や子供に泣かされるドラマはよくあるが、こういう形で心動かされることはとても珍しい。
私もデビュー後、かなり苦しんだ時期があった。二作目が出るまで丸二年かかり、そのあと三作目は八回修正したが、それでも出版の目処が立たなかった。もちろん私の力量不足が原因なのだが、それ以外にもいろいろと悪いことが重なりすぎた。
なにしろどん底の時期で、あのときの絶望感は半端なものではなかった。同じころデビューした作家さんたちがどんどん本を出しているのを見て、「なんでこんなことに……」と情けなく思ったものである。
そういう経験があるので、夢を持った若者がチャンスをつかんでいく話には弱いのです。また、ここでは書けなかったが、木下監督や脚本の舞茸しめじ先生が知恵を絞るところなども好きだった。それから、本田さんの「万策尽きたー!」もよかった。あの口癖を思いついた人はすごいですよ。
あと1話で『SHIROBAKO』が終わりかと思うと、本当に残念でならない。ぜひ続編をお願いします。
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