生誕125年 萩原朔太郎展(世田谷文学館)
麻見和史です。日記の更新が止まっていましたが、なんとか無事です。例によって、ばたばたしておりました。
10月29日に世田谷文学館に行ってきたので、その件を報告します。
*
新宿から京王線に乗り換え、芦花公園(ろかこうえん)駅で下車した。

また「防火木槽」を発見(本当は「防火水槽」なのだが「木槽」に見えてしまう)。「千代田区の消火器」のときも似たものを紹介しました。
見るたびに思うのだが、これ、デザイン案の段階で、誰も違和感を抱かなかったのだろうか。
7分ぐらい歩いて世田谷文学館に到着。
『生誕125年 萩原朔太郎展』を見た。
朔太郎展は2階で行われていた。この会場で14時20分より、からくり劇の「猫町」が上演された。
じつは1階常設展コーナーに「ムットーニのからくり劇場」というのがあり、もとは「猫町」もそこにあったものらしい。朔太郎展をやるので、これだけ2階に移動したのだろう。
事前の調査で、このからくり劇場が大変気になっていた。A、Bふたつのグループがあるが、Aが14時半にスタートするというので、企画展を抜けて1階に降りた。チケットにスタンプを押してもらうと、当日中は何度でも出入りできるそうです。
ムットーニというのは自動人形師・武藤政彦さんのことだそうだ。初期は油絵を描いていたが、のちBOXシアターという今の作品スタイルを確立した。
2007年にこの文学館で行った企画展「ムットーニのからくり書物」が好評で、終了後も三つの作品を常設展示するようになったそうだ。のち4作品を加えて全7作品となった。それを2グループに分けて、毎時30分から動かして見せてくれている。
ということで14時半からAグループを鑑賞。
文学作品の一場面を5分から7分のからくり劇にしたもので、装置の基本形状は、小型ブラウン管テレビぐらいの箱だ。そこに風景や人形が配置され、スイッチを押すと劇が始まる。
文学作品が朗読され、それに合わせて人形が動き、音楽と光の効果が入る。部屋を暗くして見るから一種幻想的な雰囲気が漂う。
今まで見たことのないタイプの芸術作品で、最初は多少戸惑ったが、慣れていくと「次はどんな話だろう」と期待するようになった。
Aグループは「漂流者」「THE SPIRIT OF SONG」「眠り」「ALONE RENDEZVOUS」(アロン・ランデブー)の4作品。
世田谷文学館のサイトにはこれらのタイトルしか表記されておらず、行ってみないとどんな内容なのかわからない。だから、係員の説明を聞いてびっくりしたのである。
「漂流者」は夏目漱石の『夢十夜』から選んできた作品だそうだ。「眠り」は村上春樹作品。そして「ALONE RENDEZVOUS」はなんとレイ・ブラッドベリの「万華鏡」(『刺青の男』所収)だったのだ。そんなすごいラインナップだったとは。
なぜこれらの説明をウェブサイトに表記しないのか不思議に思った。一般へのアピールになるはずなので、絶対に書き添えたほうがいいと思うのですが。
15時半からはBグループも見た。こちらは海野十三の「月世界探険記」と中島敦「山月記」の2作品だった。
からくり劇の感想。
今日見た中では「漂流者」がよかった。他人の夢の話を聞かされるのは往々にして退屈なものだが、これは状況が異様で面白い。
一方、残念だったのは「ALONE RENDEZVOUS」である。ブラッドベリの「万華鏡」だと知ってものすごく期待したわけだが、どうしたことか、この作品には朗読がなかったのだ。BGMに合わせて宇宙飛行士の人形が上下するだけという、味気ないもの。なぜだ、なぜこんなことに……。
「万華鏡」を知らない人が見たら、これ、ただの宇宙遊泳だと思ってしまうのではないだろうか。
もっとも退屈に見えるものが、じつはすごい傑作だったということに、多くの人が気づいていないのだ。本当にもったいないことである。
最後に、萩原朔太郎展の感想。
味わいのある装丁の詩集、手紙など、資料が豊富だった。朔太郎が写真に凝っていたことは聞いていたが、立体視できる写真が三つ用意されていて、現物を確認することができた。これは非常にセンスある展示だと感じました。
また、本人による自作朗読が流れていて、ちょっと面白かった。詩人なのだし、よほど情感豊かにやるかと思いきや、まったく平板な読み方をしているのだ。意外だった。
萩原朔太郎展は12月4日までです。
次回予告。世田谷文学館を出た私は、一路、芦花公園を目指すのであった。
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