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2009年9月 4日 (金)

Pandemic

 麻見和史です。仕事を調整して、新型インフルエンザ関連のシンポジウムに参加してきました。

 場所は東京大学本郷キャンパスの安田講堂。国立大学法人東京大学医科学研究所主催の公開シンポジウム『Pandemic』に出席した。8月4日に参加した医科研の高校生向けセミナー『ラブラボ』(詳細はこちら)で今日のシンポジウムのことが河岡先生から告知されており、早めに申し込みをしてあったのだ。
 

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 毎度おなじみの安田講堂。東大のシンボルである。
 入り口近くに看板が出ていた。
 

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 見るからに邪悪な感じのデザイン。ポスターにもこのイメージが使われていた。

 混むだろうと思っていたので、30分ぐらい前に入場した。
 

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 ごらんのように、このときはまだ席に余裕があった。しかしどんどん聴衆が増え、最終的には満席に近い状態となった。安田講堂にこれほど聴衆が入ったのを見るのは、初めてだ。

 報道関係者用の席も用意されており、テレビカメラが5、6台入っていた。メディアの人は50人ぐらいいたのだろうか。通路でひげを生やした男性が同僚と立ち話をしており、「社会部がどう動いてるかわからないので……」といった会話が聞こえてきた。彼らは科学部に所属しているのかもしれない。
 定刻になり、順次講演者からの発表が行なわれたが、人が替わるたび、報道陣十数名がばらばらと前に出て写真を撮った。2、3分で撮影を終え、自分の席に戻っていく。意外に小さめのデジカメを持っている人が多く、おそらく記者兼カメラマンなのだろうと推測した。挨拶を含めて6名が喋ったので、取材者は合計6回写真を撮りに走ったことになる。

 発表内容は以下のとおり。内容が盛りだくさんだったため、メモの間違いがあるかもしれない。ご容赦ください。発表者については、敬称略で失礼します。

◆開会挨拶 清木元治(東京大学医科学研究所 所長)/松本洋一郎(東京大学 理事(副学長))
・松本先生が「こんなに大勢の方に集まっていただいて嬉しいが、感染症対策的には大丈夫なのかと心配」と言って聴衆を笑わせていた。おっしゃるとおりです。

「H1N1新型インフルエンザの登場と疫学」 進藤奈邦子(WHO(世界保健機関)メディカルオフィサー)
・2009年4月12日にメキシコで新型インフルエンザが発生、以後9週間で世界中のWHO事務所で患者を確認した。大変な速さで感染が広まり、パンデミックとなった。
・WHOの発表するフェーズは6まで上がったが、これは感染力を示すものであり、患者の重症度とは無関係である。
・感染を確認するキットはWHOから138カ国、675セットを配布した。1キットで500回ぐらいテストできる。今は抗インフルエンザ薬に耐性を持つ変異を起こしていないか、また強毒化していないかを確認している。
・患者は10~19歳の若年層で最多となっている。
・日本では休校や神戸祭りの延期などで流行が抑えられた。これは世界から注目されている。
・ひとりから何人に感染するか。従来のインフルエンザだと1.2~1.4。今回は1.2~1.7となっており、感染力は高い。
・症状。咽頭痛、咳のあとに発熱する。熱が出てから病院に行くケースが多いので、咳の段階で他者に感染させている可能性が高い。
・重症者は有症者の1~10%ぐらい。
・重症者には基礎疾患があるケースが多い。ハイリスクの患者。
・そのほか妊婦の死亡例も多い。特に第三周産期の人は危ない。カナダでは死者の三分の二が妊婦。

「H1N1新型インフルエンザウイルスの特徴」 河岡義裕(東京大学医科学研究所 教授)
・いつまで新型インフルエンザと呼ぶのか。
・これからどうなるか。9月下旬から10月にかけてピークとなりそう。
・どれぐらいの人が感染するか。従来の、季節性のインフルエンザだと多いときで100万人が感染。新型はそれを上回るか。
・病原性は従来と同じか。ちょっと違う。新型は肺で増える。
・ウイルスの病原性は増すのか。ウイルスは8パターンで細胞に入り、組み合わさって外に出る。2の8乗で32のパターンに変化し得る。変異により、感染性が増す、または強毒性となる可能性がある。
・タミフル耐性種は出るか。可能性はあるが、耐性種が流行性となるのは稀なので心配はいらない。タミフルは使ったほうがよいだろう。
・若者のみの感染か。多くかかるのは若者だが、多く亡くなるのは高齢者である。1918年以前、スペイン風邪にかかった90歳超の人は新型インフルエンザの抗体を持っているケースがある。
・ワクチンを接種しても、それで絶対にかからないというわけではない。

「日本のインフルエンザ対策」 岡部信彦(国立感染症研究所感染症情報センター センター長)
・日本では学校で手洗い、うがい、マスクの使用を生徒に指導しており、海外の人には驚かれる。
・この秋については、学校閉鎖、集会の中止まではしなくてよいだろうと思う。
・ワクチンの配布は基礎疾患のある人を優先。国内で今年生産できるのは1300万~1700万人分。

「この冬どう備えるべきか」 菅谷憲夫(神奈川県警友会けいゆう病院 小児科部長)
・人口の20~30%が発病するとしたら日本では2560万~3840万人。その1~2%が入院し、そのうち0.1%が死亡するとしたら日本では3.8万人。
・日本の病院ではICU設備が不足すると思われる。日本では7~8万人がICU入院必要か? だとすると収容しきれない。
・脳症に注意。小児だけでなく中学生ぐらいまでは気をつけること。
・学級閉鎖は有効。ただ、子供の世話をするため親が休むので、労働力は16%減となりそう。医療関係や介護関係では30%に達するか。
・来年2010年の秋には第二波が来るだろう。

ラウンドテーブルディスカッション 司会:野本明男(東京大学大学院医学系研究科 特任教授)
・今のうちにインフルエンザにかかってしまったほうがいいか。海外でそういう意見があるようだが、ひとりひとりへの感染がウイルスにとっては変異のチャンスである。無闇に感染しないほうがいい。また、感染爆発となれば医療関係者に負担がかかる。感染拡大を招くような行為は、公衆衛生学的にはナンセンスである。日本はICUも少ない。(進藤先生)
・国産ワクチンの不足を、輸入ワクチンで補おうという話があるが、安全性評価をきちんとしないと危ない。(河岡先生)
・ワクチンは、個人を守る力は弱いが、社会全体を守るために有効。高齢者やハイリスク者を守るためには、抗ウイルス薬だけでなく、ワクチンを使うべきである。(菅谷先生)
・この夏になぜピークが来たのかはわからない。(河岡先生)
・理由は不明だが、肥満者もハイリスクである。もしかしたら妊婦と肥満者は同じ理由でハイリスクなのかもしれない。(進藤先生)
・妊娠しているならワクチンは打つべきである。(菅谷先生)
・ワクチンは7~8割の人の発症を抑えることしかできない。あらかじめ、そういうものだと考えておくべきである。だからといって、ワクチンは不完全だという報道をされると、翌年以降のワクチン製造に大きな影響が出る。報道関係者は注意してほしい。(進藤先生)

 感想。進藤先生の話に説得力があった。「水疱瘡には早くかかったほうがいいからと、罹患している子の家にわざわざ遊びに行った」などという話を、以前私も聞いた覚えがある。インフルエンザでこれをやってしまうと、大変なことになる。
 医師、看護師、病床などを「医療資源」と考え、限りあるものだと理解しておく必要があるだろう。

 ところで……。あれだけカメラが来ていたので当然NHKで報じられるかと思ったのだが、結局19時のニュースでも、21時のニュースでも出てこなかった。あの映像、その後どこかで使われたんでしょうか。

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