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2009年8月 4日 (火)

ラブラボ(「パンデミックだ!」ほか)

 麻見和史です。サブカルチャー系のイベントではありません。『ラブラボ』は東京大学医科学研究所が主催する、歴としたセミナーである。おもに高校生を対象としているらしく、そういえば8月6日、7日に東大のオープンキャンパスがあるので、それに連動しているのかもしれない。

 東大医科研は白金台にある。地下鉄の駅を出ると、すぐ入り口があった。以前一度訪問したことがあるのだが、そのときは裏口から入ったので、こんなに駅に近いとは思わなかった。
 

01
 重厚な雰囲気の漂う校舎。医科研の前身は明治25年設立の伝染病研究所である。

 講堂は予想より小さめだった。開始10分前にはすでに7割方席が埋まっており、参加者の意気込みが感じられた。
 

02
 ごらんのとおり、高校生諸君が集結している。中にちらほら、年配者の姿も。

 以下、講演内容のメモである。敬称略で失礼します。

「新しい病原体検出法の開発」飯田哲也(大阪大学微生物病研究所教授)
・ゲノムとは、ある生物の持つ遺伝情報のすべて。
・全ゲノムショットガン配列決定法で、DNA解析が相当速くなった。
・感染症のメタゲノミック診断。特定の細菌を狙い撃ちで抽出するのではなく、全部まとめて解析し、病原体がいるかどうかチェックする方法。事前に病原体の情報がなくても、抽出ができる。

「マラリア物語」田邉和裄(大阪大学微生物病研究所教授)
・日本にはもうマラリアはない。しかしアフリカなどでは今も猛威をふるっている。
・恐竜絶滅後、哺乳類の出現とともにマラリア原虫は発生。ヒトの歴史とともに生きてきた。
・赤血球に寄生し、破壊する。高熱を発し、重症化すると脳炎や貧血を起こす。
・マラリアは多型で、ひとつのマラリアにかかっても、また別のマラリアにかかる可能性がある。

「水疱瘡と帯状疱疹って同じウイルスで起こる!?―ヘルペスウイルスの不思議」川口寧(東京大学医科学研究所准教授)
・細菌はそれ自体で増殖できるが、ウイルスは生きた細胞(宿主:しゅくしゅ)に入り込まないと増殖できない。
・ヘルペスウイルス。水疱瘡と帯状疱疹は同じウイルスで引き起こされる。潜伏感染。

「パンデミックだ!」河岡義裕(東京大学医科学研究所教授)
・日本で新型インフルエンザの死者が出なかったのは、タミフルにより重症化がなかったことと、学級閉鎖などで感染拡大が抑えられたのが理由。経済効果云々で学級閉鎖はやりすぎだとする批判があったが、あれは間違っている。
・いつまで新型インフルエンザと呼ぶのか。古典的ブタ+北米鳥+H3N2が混じったものが1997~1998年に発生。そこへユーラシア鳥由来ブタが混じって新型インフルエンザとなった。
・現在南半球で大流行している新型インフルエンザは、この冬間違いなく日本で大流行する。学級閉鎖などをしっかり実施することが必要。
・高齢者が感染しない、というのは正確ではない。90歳以上の人は新型インフルエンザに対する抗体を持っている可能性が高いが、それより若い人は持っていない。季節性のインフルエンザでも感染者は15歳ぐらいがもっとも多いので、今回特別なことが起こったわけではない。
・新型ではウイルス性肺炎が起こる。いつものインフルエンザと違うようだ。
・タミフル耐性インフルエンザが出てきているが、これはパンデミックにはならない。また、新しい治療薬を臨床試験中である。
・マスクは意外と有効。うがいは無効。石鹸による手洗いが一番効果がある。

 河岡先生はインフルエンザ研究の第一人者で、テレビなどの取材も受けていらっしゃるようだが、なぜだか言葉の端々にメディア批判や一般大衆批判の気配が感じられた。先生は研究者であり、実務は厚生労働省やWHOの仕事、というのは事実である。しかし、今もっとも正確な情報を発信できる方のひとりだと思われるだけに、一歩引いたように見えてしまうのは残念な気がした。
 そんなふうに思うのは、もしかしたらテーラーメイド医療のシンポジウムで、間野先生の男気を目の当たりにしたせいかもしれないが……。

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