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2009年3月31日 (火)

『戦争のかたち』

 麻見和史です。春休み特別企画、廃墟特集その3。

『戦争のかたち』 下道基行 リトルモア

画像

 廃墟特集とはしたが、本書はちょっと異質な写真集である。
 被写体のカテゴリーとしては「戦争廃墟」というべきもので、第二次大戦中に造られた軍関係の施設を紹介した本だ。著者の下道さんは全国を渡り歩き、トーチカ、砲台、掩体壕(えんたいごう)、兵器試験場などを丁寧に撮影している。
 一般に、廃墟本の著者は撮影場所を秘匿したがる傾向にある。なぜかというと、前回のエントリーにも書いたとおり、廃墟を撮影するという行為は廃墟写真家にとって「探検」であり、被写体のありかをライバルに教えるのは得策ではないからだ。ところが本書の巻末には、作品の撮影地点が地図になって掲載されている。これは驚きである。
 おそらく下道さんは芸術写真を目指すのではなく、この本を戦争遺跡のガイドブックにしようとしているのであろう。そして、その方針はおそらく間違っていない。なぜかといえば、掲載された被写体たちは、戦争廃墟といってもほとんど日常生活にとけ込んでいて、もはやものものしい雰囲気を保ってはいないからである。猿山や花壇と化した砲台、物置にされてしまった掩体壕などがその例だ。
 ここにあるのは、戦争の悲惨さを感じさせようという大上段の構えではない。ふらりと訪れた場所に何か奇妙なものがあって、調べてみたらなんと戦争廃墟だったんですよ──というような、新しい世代の「発見の喜び」が撮影活動の原動力となっているように思う。

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